文字で見る柳川

食卓の定番

有明海には、アカシタビラメ、ムラサキシタビラメ、シマウシノシタ、イヌノシタの4種類のウシノシタ類(シタビラメ)が生息しています。4種類どれもを、地元の人々は「くっぞこ」と呼び、愛して止みません。「くっぞこ」は靴の底という言葉が訛ったといわれており、靴底のような形をしていることから呼ばれるようになりました。

 

くっぞこは、主に刺身、煮付け、唐揚げ、ムニエルで調理され、肉厚な身にしっかりと味の染んだ煮付けは特におすすめ。あっさりと淡白なようで、実は濃厚。産卵期には卵も入り、また絶品の一品となるのです。

 

くっぞこ料理にはこんな昔話も残っています。 昔々、瀬高に政という人がいました。ご家中(柳川市城内地区)に日雇いに行く度に「給金ないらんけん白飯にくつぞこの色つけがよか(給料はいらないから、白ご飯にくちぞこの煮付けが良い)」と望んでいました。そこから「瀬高政」という言葉ができ、白ご飯とくちぞこの煮付けを食べることを「瀬高政」というようになりました。 くっぞこは、柳川の食卓に欠かせない、昔からの定番料理なのです。

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有明海で育つ海苔

干満の差が最大6メートルに達する有明海。日本で最も干満の差が大きいとされています。水平線に沈んでいく夕日と漁船や海苔ひび(海苔養殖用網)が織りなす光景は、地元の人達も「綺麗かね~」と感動する程です。 干満差の激しい有明海に面する柳川市は、全国第2位の海苔の水揚げ量を誇ります。支柱式の養殖を行っており、満潮時には海中の豊富な栄養分を吸収し、干潮時は太陽の光を浴びて乾燥することにより高品質の海苔が収穫されています。中でも海苔収穫期の一番初めに摘み取られる海苔は「花海苔」と呼ばれ、海苔生産者に伺うと「花海苔は、口の中でとろ~っと溶けて、海苔の表面がつるっとしとるのが特徴やんね」とのこと。柔らかさと磯の香りが漂う紫黒(しこく)色の海苔は、有明海ならでは。

 

海苔生産者の中には農業と兼業されている方も多く、4月から10月の間に米・麦・大豆、巨峰などを育て、冬場は海苔の養殖をするといったサイクルで行われているようです。

 

海苔の始まりは7月。海苔網の準備から始まり、9月~10月になると、支柱立ての作業です。漁場は毎年抽選で決まるため、その年の漁場に合わせて支柱のサイズを変えます。ずらっと一列に揃え立てられた支柱は長年の経験と差し手の性格が現れるといいます。支柱を見ただけで「あの立て方は○○さんやね~」と言い当てる生産者もいる程。支柱の間にはられた網には、いろんな色があるので、航空写真などで見るとまるで有明海に大きな「花ゴザ」を敷いたようにも見えます。 実際に船に乗り海苔養殖の中へいくと、初めての人は迷ってしまいます。しかし、養殖エリアなどはしっかり決められており、海苔師たちは迷う事はないそうです。

 

いよいよ1年が決まる10月半ばの採苗解禁日。 時計が朝6時を指すとボーッというモーター音とともに一斉に海苔船が出港します。1時間でも早く海苔網を海に張ると、その後の成長も違ってくるのです。網を張ってしまうと、その後は毎日欠かさず海に出て網の高さを調整したりゴミを取り除いたりメンテナンスが必要です。生産者は「手ば掛ければかける程、よか海苔のできる」と言い、手間をかけて海苔の手入れをすることで病気が入るのを防ぎ、品質も収穫量も高い海苔を育てることができます。

 

海苔の摘み取りは、海苔が20~25センチ伸びた頃。初摘みは11月中旬です。黒々と育った海苔を海苔摘み機を乗せた箱船で摘み取っていきます。箱船いっぱいに海苔がたまり、その光景はまるで海苔のお風呂のよう。 黒く品質の良い海苔を収穫するには、主に夜明けから摘み取り作業を行う方が良いといいます。メンテナンスから、夜明けの摘み取りまで、生産者は潮見表をもとに海へ向かう生活が、収穫終了となる翌年3月まで続くのです。 こうして育てられた柳川の海苔は、地元はもちろん東京や関西などにも出荷され市場でも高い評価を受けています。

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